
廃業手続きとは、会社を法的に完全に消滅させるための手続き(解散・清算)です。廃業を検討している方で、「廃業は失敗ではないか」「手続きが複雑で費用もかさむのではないか」といった不安を感じている方もおられるのではないでしょうか。
しかし、適切な手順と専門家のサポートがあれば、廃業は混乱なくスムーズに進められます。廃業を「失敗」ではなく「区切り」として捉え、廃業を決意した際にまず検討すべき準備は、以下のとおりです。
- 準備①廃業前にM&Aの可能性を探る
- 準備②廃業の全費用と手元資金の確認をする
- 準備③専門家との連携体制を構築する
この記事では、廃業の決断を後悔しないために検討する方法や、廃業の手続きのステップ、押さえるべきポイントを解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

廃業の決断を後悔しないために検討する3つの準備
廃業という選択は、経営者にとって非常に重い決断です。ここでは、廃業を決意した際にまず検討すべき準備を解説します。
準備①廃業前にM&Aの可能性を探る
廃業は、会社の資産や雇用、築き上げてきた取引先との関係をすべて手放しますが、M&A(企業の買収・合併)ならばその一部、あるいは全部を残せます。
経済産業省の中小企業白書によると、2024年時点で休廃業・解散件数は年間で約6.9万件発生しています。
そのなかには、黒字であっても後継者不足などで事業を終える会社が多いです。
これは、会社の価値が残っているにもかかわらず、その事業が消滅してしまうという社会的な損失です。
会社が持つノウハウや顧客基盤に価値を感じる買い手が見つかれば、従業員の雇用を守り、事業を存続できます。また、経営者自身も売却益を得て、廃業にかかる費用を大幅に削減できるというメリットがあります。
準備②廃業の全費用と手元資金の確認をする
廃業にかかる費用を正確に把握して、手元資金で賄えるかを確認することは、手続きをはじめる前の必須条件です。会社の廃業にかかる費用は、最低限の法的手続き費用だけではなく、従業員への退職金、オフィスの原状回復費用、在庫や設備の処分費用など多岐にわたります。
中小企業庁の「2019年版中小企業白書」によると、廃業費用の総額が100万円以上かかったとの回答が36.2%に上り、中には1,000万円を超えた事例もあります。解体工事が必要な場合、費用は規模や地域によって大きく変動して、予想外の出費となる可能性が高いです。
すべての費用をリストアップして、現預金でまかなえるか、不足する場合はどのように資金調達をするかを具体的に計画しなければなりません。
参考:2019年版中小企業白書・小規模企業白書概要|中小企業庁
準備③専門家との連携体制を構築する
廃業手続きは、会社法や税法、労働法など、複数の法律が絡む複雑なプロセスです。これらの手続きを正確かつ迅速に進めるためには、弁護士、司法書士、税理士などの専門家との連携が不可欠となります。
法人(株式会社)の廃業手続きにおいては、「解散登記」「清算人選任登記」「清算結了登記」などの法務局での手続きが必要です。また、税務署への「解散確定申告書」の提出などは税理士のサポートが欠かせません。
自力で進めようとすると、書類の不備や期限超過による過料(罰金)のリスク、手続きの長期化を招く場合があります。
専門家をチームとして早期に組織すれば、経営者は本業の整理や関係者への対応に集中できます。

会社をスムーズに終わらせるための具体的な3つのステップ
廃業の決断と準備が整ったら、実際の廃業手続き(会社法上の「解散・清算手続き」)へと移行します。ここでは、後戻りのできない清算プロセスをスムーズに進めるための具体的なステップを解説します。
ステップ①株主総会での解散決議と登記
会社を自主的に廃業する場合、まず株主総会を開き、解散の決議を行い、以下の流れで進めていかなければなりません。
- 解散の特別決議の実施
議決権を行使できる株主の過半数が出席して、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となる
- 清算人の選任
解散決議と同時に、会社の残務処理を担う「清算人」を選任する。通常は元の代表取締役が就任する場合が多い
- 法務局での登記
決議後、本店の所在地で2週間以内に、法務局にて「解散登記」と「清算人選任登記」を行う
これらの登記が完了すると、会社は通常の営業活動ができなくなるため、「清算会社」となります。
ステップ②債権者保護手続きと資産の清算
解散登記が完了したら、清算人は以下の流れで債権者保護と資産整理を進めます。
- 官報公告による債権者への通知
官報(国の機関紙)に解散公告を掲載し、会社の債権者に対して、債権を申し出るよう通知する。会社法により、この公告期間は2か月以上と定められている
- 財産目録と貸借対照表の作成・承認
清算人は、会社の財産目録と貸借対照表を作成して、株主総会で承認を得る
- 現務の結了と債務の弁済
在庫の売却や、不動産の処分、売掛金の回収などの「現務の結了」(資産の換価)を行う。また、換価した現金を用いて、債務の弁済を進める
清算作業中に債務超過(債務を弁済しきれない状態)が判明した場合、清算を継続できなくなり、「破産手続き」に移行しなければなりません。
ステップ③清算結了登記で会社を完全に消滅させる
すべての清算事務が完了した後、会社を法的に完全に消滅させるために以下の手続きを行います。
- 残余財産の分配
すべての資産の換価(現金化)と債務の弁済が完了して、残った財産(残余財産)があれば株主に分配する
- 決算報告書の作成と承認
清算人は、一連の清算事務の結果をまとめた「決算報告書」を作成して、株主総会を開いてその承認を得る
- 清算結了登記の実施
決算報告が承認された日から2週間以内に、法務局で「清算結了登記」を行う。この登記により、登記簿上の会社も消滅して、会社は法的に完全に消滅したことになる
登記の手続き完了後、税務署や都道府県税事務所などに清算結了の届出を提出すれば、法人としてのすべての手続きが完了となります。

法人・個人事業主の廃業手続きで押さえるべき4つのポイント
廃業手続きを成功させるためには、法的な流れだけでなく、税務や費用面など、実務的なポイントを押さえておかなければなりません。ここでは、法人および個人事業主の廃業において、注意すべきポイントを解説します。
ポイント①法人の廃業に必要な費用は最低約8万円かかる
法人(株式会社)の廃業手続きには、国に納める登録免許税や官報公告費用など、最低でも約8万円の費用が必須となります。
以下が費用の詳細です。
◆法人の廃業にかかる費用(最低限の法定費用)
| 項目 | 費用目安 |
| 解散登記(登録免許税) | 30,000円 |
| 清算人選任登記(登録免許税) | 9,000円 |
| 清算結了登記(登録免許税) | 2,000円 |
| 官報公告費用 | 約30,000円~40,000円 |
| 合計 | 約71,000円~81,000円 |
この金額は、すべて自社で手続きを行い、専門家への報酬が発生しない場合の最低限の費用です。
ここに、弁護士や司法書士への報酬(数十万円~)や、原状回復費用、資産処分費用が加わるため、総額は数百万円に達するケースも少なくありません。
ポイント②個人事業主は廃業届の提出のみで費用が抑えられる
個人事業主の廃業手続きは、法人のような登記や官報公告が不要なため、費用は一切かかりません。
主な手続きは、事業を廃止した日から1か月以内に、所轄の税務署と都道府県税事務所に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出しましょう。
青色申告を行っていた場合は、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」なども提出が必要です。
このため、個人事業主の場合、事業内容や形態にもよりますが、行政への手数料はかからず、費用をほとんどかけずに廃業できます。
なお、廃業届の書き方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:廃業届の書き方とは?廃業する際に必要な手続きや廃業届の提出方法を詳しく解説します!
ポイント③従業員への解雇予告は30日前までに行う
従業員を雇用している場合、廃業に伴い解雇する際は、労働基準法にもとづき、解雇日の30日以上前に解雇予告を行う義務があります。
もし30日前に予告をしない場合、不足日数分の「解雇予告手当」を支払わなければなりません。
この手当は、従業員の生活保障の観点からも非常に大切です。また、解雇だけでなく、社会保険や雇用保険に関する手続き(資格喪失届、離職票の交付など)も迅速かつ正確に行う必要があります。さらに、ハローワークや年金事務所への届出が必須となります。
ポイント④廃業後の税金(解散確定申告)の支払いがある
会社の解散から清算結了までの期間、事業年度を区切って税務申告を行う必要があります。
具体的には、解散日の翌日から2か月以内に、解散日までの事業期間に対応する「解散確定申告書」を税務署に提出しなければなりません。
その後、清算事務が完了するまでの期間も、清算会社の事業年度として申告が必要です。これらの税務手続きは非常に専門性が高く、通常の確定申告とは異なるため、税理士に依頼する場合が一般的です。

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廃業手続きでよくある3つの質問
廃業手続きでよくある質問をご紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。
質問①廃業にはどのくらいの期間がかかるのでしょうか?
法人の廃業手続き(通常清算)にかかる期間は、最短でも約3〜4か月が目安となります。
これは、会社法で定められている「官報公告期間(2か月以上)」があるためです。
債権者保護の手続きを確実に実施するため、この期間は短縮できません。会社の規模や抱える債務の量、資産の売却状況によっては、半年から1年以上かかる可能性もあります。
質問②廃業前にM&Aを検討するメリットは何ですか?
廃業手続き前にM&Aを検討する最大のメリットは、経営者が会社売却益という金銭的な対価を得られる可能性がある点です。
これにより、廃業にかかる費用を賄えたり、老後の資金を確保できたりします。
また、従業員の雇用や、長年築き上げてきた技術・ノウハウを存続させられるという非金銭的なメリットも大きく、後悔のない事業の幕引きにつながります。
質問③債務超過でも通常清算は可能ですか?
債務超過の状態では、原則として通常清算はできません。通常清算は、会社のすべての債務を弁済できる「資産超過」の状態が前提です。
清算事務の途中で債務超過が判明した場合、清算人は残っている資産を債権者に公平に分配するため、裁判所に「破産手続開始の申立て」を行う義務があります。
この判断は、非常に大切であるため、専門家である弁護士や司法書士に相談しましょう。

廃業を「区切り」として新たな一歩を踏み出そう!
廃業という選択は、経営者にとって重い決断ですが、適切な準備と手順を踏めば、単なる会社の終わりではありません。
これまでの功績を清算して、新たな人生のスタートを切るための「区切り」となります。会社をスムーズに廃業するためのステップは以下のとおりです。
- ステップ①株主総会での解散決議と登記
- ステップ②債権者保護手続きと資産の清算
- ステップ③清算結了登記で会社を完全に消滅させる
これらの手続きには、専門家や株主などさまざまな人たちの協力がなければ進まないため、コミュニケーションが欠かせません。すべての手続きを滞りなく完了させ、前向きな気持ちで新たな未来を切り開きましょう。
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