
原状回復工事とは、店舗やオフィスなどの事業用物件においては「賃貸借契約書で定められた状態に戻すこと」です。居住用物件とは異なり、「契約書の特約」が絶対的なルールとなります。
結論として、居住用では免除されやすい通常の使用による損耗(通常損耗)や経年劣化も、特約によってテナント負担とされるのが一般的です。
この契約内容を正しく理解し、高額請求のトラブルを避けて適正な費用で退去手続きを進めるために、以下の3つのステップを実践しましょう。
- ステップ①入居時の賃貸借契約書を再確認する
- ステップ②オーナー(管理会社)と工事区分について協議する
- ステップ③C工事(自社発注)の相見積もりを取得する
この記事では、事業用物件特有の原状回復工事の定義から、高額請求を避けるための具体的なチェックポイントまで詳しく解説します。

原状回復工事の高額請求を避けるための3つのチェックポイント
オフィスや店舗を退去する際、原状回復工事の費用が想定外に高額になるケースは少なくありません。高額請求のトラブルを未然に防ぐためには、入居時から退去時まで、テナント(借主)側が確認すべき重要なポイントが3つあります。
これらのチェックポイントを押さえておけば、オーナー(貸主)との認識のズレがなくなり、適正な費用負担での退去が可能になります。
チェックポイント①「通常損耗」と「経年劣化」の範囲を明確にする
最も重要なのが、工事の負担範囲を明確にすることです。居住用物件を対象とした国土交通省のガイドラインでは、通常損耗や経年劣化はオーナー負担とされていますが、テナントや店舗などの事業用物件では、このガイドラインは原則適用されません。
事業用物件では契約の自由度が高く、「通常損耗を含め、借主の負担で原状回復を行う」といった特約が契約書に盛り込まれているのが一般的です。
まずは契約書を確認し、どこまでがテナント負担かを把握しましょう。
チェックポイント②賃貸借契約書の「特約」を見落とさない
事業用物件の原状回復は、契約書の「特約」がすべてと言っても過言ではありません。
「スケルトン戻し(内装をすべて撤去し、建物の骨組みだけの状態に戻すこと)」が義務付けられていないか、クリーニングの範囲はどこまでかなど、細かな条文まで確認しましょう。
入居時に結んだ契約内容が、退去費用の総額を決定づけるため、徹底的に読み返す必要があります。
チェックポイント③工事業者の選定プロセスを確認する
原状回復工事を誰が行うのかも、費用を左右する大きな要因です。
事業用物件の工事は、主に「B工事」と「C工事」に区分され、誰が業者を選定できるか(=相見積もりが取れるか)によって、テナント側の費用コントロールのしやすさが変わります。
◆工事区分による業者選定と相見積もりの違い
| 工事区分 | 業者を選定する人 | テナントの裁量(相見積もり) |
| B工事 | オーナー(貸主) | できない(指定業者の価格を受け入れる) |
| C工事 | テナント(借主) | できる(適正価格の業者を選べる) |
契約書で「オーナー指定業者」による施工(B工事)の範囲が広い場合、テナント側で相見積もりを取ることができず、費用が高額になる傾向があります。C工事の範囲が広ければ、自ら適正価格の業者を選ぶことで、トラブル回避やコスト削減につながります。
なお、原状回復費用が高すぎるときの対処法については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
原状回復費用が高すぎるときの対処法は3つ|高くなりやすいケースや安く抑えるコツを解説! – 金山株式会社

適正な原状回復工事を実現する3つのステップ
事業用物件の原状回復工事でのトラブルを避け、適正な費用で退去手続きを完了させるためには、事前の準備と交渉が不可欠です。ここでは、テナントが主体的に動くべき3つの手順を解説します。
ステップ①入居時の賃貸借契約書を再確認する
まずは、すべての土台となる「賃貸借契約書」を徹底的に読み返しましょう。
とくに、確認すべきは、「原状回復の範囲」に関する条項、「特約」の有無、そして「B工事・C工事」の区分です。
どこまでがテナントの負担範囲として具体的に明記されているか、不利な特約が設定されていないかを正確に把握することが第一歩となります。
ステップ②オーナー(管理会社)と工事区分について協議する
契約書の内容を踏まえ、退去の意向を伝える早い段階で、オーナーや管理会社と工事範囲(工事区分)について協議の場を設けましょう。
どの部分をテナントが修繕し(C工事)、どの部分がオーナー指定業者の施工(B工事)となるのかを、現場で立ち会いながら明確に区分けすることが大切です。
この協議内容を「工事区分表」などの書面にまとめ、双方で合意しておけば、退去間際の「言った・言わない」のトラブルを防げます。
ステップ③C工事(自社発注)の相見積もりを取得する
C工事(テナント側が業者を選定し、費用も負担する工事)の範囲が確定したら、必ず複数の業者から見積もりを取得しましょう。B工事と異なり、C工事はテナント側でコストコントロールが可能な唯一の領域です。
内装解体や造作物の撤去など、信頼できる業者に適正価格で依頼することで、原状回復費用の総額を大幅に削減できる可能性があります。

原状回復工事の目的と3つの関連用語
原状回復工事とは、賃貸物件を退去する際に、入居時の状態に戻すための工事を指します。
ただし、居住用物件とは異なり、店舗やオフィスなどの事業用物件では「通常損耗や経年劣化もテナント負担とする」という特約が契約書に含まれているのが一般的です。
そのため、「借りた時点の状態」ではなく、「契約書で定められた状態(例:スケルトン)」に戻すことが目的となります。
原状回復の交渉を進めるうえで、混同しやすい用語や事業用物件特有の工事区分があります。とくに、B工事・C工事の違いは費用負担に直結するため、正しく理解しておきましょう。
◆原状回復工事と関連用語の違い
| 用語 | 概要 |
| 現状回復 | 「今の状態のまま回復させる」という意味で使われる場合がありますが、一般的には「原状回復」の誤記や俗称。賃貸借契約においては「原状回復」が正しい用語となる |
| 原状復帰 | 「原状回復」とほぼ同義で使われる言葉。「元の状態に戻す」という意味合いを持つ |
| B工事・C工事 | 主にオフィスビルや商業施設で使われる工事区分 ・B工事はオーナー指定の業者が行うが、費用はテナントが負担する (例:空調、防災設備) ・C工事は、テナントが業者を選定し、費用も負担する (例:内装、電話・LAN工事) |
これらの用語、とくにB工事とC工事の区分を契約書で正確に把握しておくことが、適正な見積もりを算出し、オーナー側との交渉をスムーズに進めるための鍵となります。

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「原状回復工事とは」でよくある3つの質問
最後に、原状回復工事に関してよくある質問をご紹介します。それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
質問①原状回復工事の費用相場はどれくらいですか?
費用相場は、物件の種類(居住用、オフィス、店舗)や広さ、内装の状況によって大きく変動するため、一概に示すのは困難です。
オフィスの場合、小規模(〜30坪)で1坪あたり2万〜5万円、中規模(〜100坪)で1坪あたり5万〜10万円程度が目安とされることもありますが、あくまで参考値です。正確な費用を知るためには、必ず複数の業者から見積もりを取得することをおすすめします。
質問②「居抜き」で退去する場合、原状回復は不要ですか?
「居抜き」とは、内装や設備を残したまま次のテナントに引き継ぐことを指します。次のテナントが見つかり、オーナー(貸主)が居抜きでの退去を承諾すれば、原状回復工事の義務が免除される場合があります。
ただし、オーナーの許可なく勝手に居抜き退去はできず、契約上はあくまで原状回復義務が残っている状態です。必ず事前にオーナーの承諾を得る必要があります。
なお、居抜き物件を契約する際のステップについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
居抜き物件とは?メリット・デメリットや契約する際のステップまで詳しく解説します!
質問③原状回復費用は、保証金(敷金)から相殺されますか?
退去時に原状回復費用が確定した後、テナントが預けている保証金(敷金)から工事費用が差し引かれ、その残額が返還されるのが一般的です。
しかし、見積もりが高額になり、保証金を上回る費用を請求されるケースも少なくありません。
そのためにも、事前に工事区分を明確にし、C工事で相見積もりを取るなどして、費用を適正化する努力が重要になります。

原状回復工事の定義を理解し、不当な費用請求を回避しよう!
この記事では、店舗やオフィスなど事業用物件の原状回復工事について、高額請求を避けるチェックポイントや、適正な工事を行うための手順について解説しました。
事業用物件の原状回復は、居住用とは異なり「契約書の内容」がすべてです。
オーナーとの不要なトラブルを避け、適正な費用で退去手続きを進めるために、以下の3つのステップを確実に実行しましょう。
- ステップ①入居時の賃貸借契約書を再確認する
- ステップ②オーナー(管理会社)と工事区分について協議する
- ステップ③C工事(自社発注)の相見積もりを取得する
原状回復工事の交渉は、退去の意向を伝えるタイミング(一般的に3ヶ月〜6ヶ月前)と同時に開始するのが理想です。早めに協議の場を設けることで、C工事の相見積もりを取る時間も十分に確保できます。
なお、「金山株式会社」では、豊富な経験と実績を活かし、周辺環境や近隣に配慮したスムーズな解体工事・原状回復工事を実現しています。岡山県全域でお客様のニーズに合わせた柔軟で信頼性の高いサービスを提供していますので、ぜひお気軽にご相談ください。⇒金山株式会社へのお問い合わせはこちら


