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廃業届を提出するメリットとデメリット|提出する時期や書き方についても詳しく解説します!

個人事業主の高齢化や後継者不足、法人成りなどで廃業を予定されている方もおられるのではないでしょうか。その場合、「廃業届」を提出しなければなりませんが、事前にメリットやデメリットを理解しておきましょう。

本記事では、廃業届を提出するメリットやデメリット、提出する時期、書き方についてご紹介します。また、必要書類や提出方法、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

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廃業届とは?

廃業届とは?

まず、廃業届の概要について解説します。

  • 廃業
  • 廃業届
  • 破産との違い

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.廃業

廃業とは、個人事業主が廃業届を提出し、事業を終了させることを指します。主な原因としては、経営者の高齢化や健康問題、市場の変化による経営困難、法人成りなどが一般的です。

また、このプロセスでは、事業の形態や状況によって必要な届出が異なります。廃業する際には、期限付きで事業活動を停止するだけでなく、税務上の手続きや登記の変更など、適切な事務処理が求められます。

2.廃業届

個人事業主が事業を終了させる場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出する義務があります。この手続きは、事業を開始する際に提出する開業届と同一の形式です。

さらに、開業届と同じで廃業届を提出する際に費用はかかりません。また、廃業届を提出しておけば、個人事業主は所得税や個人事業税、源泉徴収税などの納税義務終了を税務署や都道府県に正式に通知できます。

3.破産との違い

廃業は、事業主が自主的に事業を終了することを指します。事業の撤退や新たな挑戦、さらには法人化といった前向きな理由である場合も多いです。

これに対して破産は、経営が行き止まり、事業継続が不可能となった場合に、法的な手続きを経て救済処置として行われます。このため、廃業は自らの意思による選択であり、必ずしも破産や経営不振が結びつくわけではありません。

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廃業届を提出する時期

廃業届を提出する時期

廃業届を提出するタイミングは、緊急でない場合、年末の12月31日に合わせて廃業するのが理想です。個人事業主の場合、毎年1月1日〜12月31日までの1年間に生じた所得税や消費税の確定申告をおこないますが、廃業する年は1月1日〜廃業日までとなります。

しかし、設備や在庫の処分などの費用を経費として計上するには、十分な準備期間が必要です。たとえば、9月に廃業して9月末に発生した廃業費用は、基本的に経費として認められません。

例外的に廃業後の経費が認められる場合もありますが、税務署によって見解が異なります。このリスクを避けるためにも、12月31日に廃業日を設定して、確定申告とともに手続きを進めるのが無難です。

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廃業届を提出するメリットとデメリット

廃業届を提出するメリットとデメリット

次に、廃業届を提出するメリットとデメリットについて解説します。

  • メリット
  • デメリット

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

メリット

廃業届を提出するメリットは、以下のとおりです。

  • 破産手続きを回避できる

経営が悪化する前に事業を終了すれば、破産手続きを回避できる

  • 関係者に迷惑がかかりにくい

廃業届を提出しておけば、従業員の退職金や取引先への連絡などを事前に整理できるため、大きな迷惑をかけずに済む

  • 大きなプレッシャーから解放される

経営に関するプレッシャーから解放されて、精神的な負担を軽減できる

デメリット

廃業届を提出するデメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 個人事業の継続が不可能

廃業後に再び事業を開始する場合は、新たに許可を取得し、設備や備品を一から揃える必要がある

  • 資産の売却価値が低下する

在庫や設備を売却すると、資産価値が適正に評価されず、低価格での売却を強いられる場合がある

  • 取引先への影響

廃業により取引先の売上が減少し、その取引先も連鎖的に廃業するリスクがある

  • 生活資金の不安

事業収入が途絶えるため、廃業後の生活費や借入入金の支払いなど、生活資金の確保が大きな課題となる

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廃業届の提出方法や必要書類

廃業届の提出方法や必要書類

次に、廃業届の提出方法や必要書類について解説します。

  • 提出方法
  • 必要書類

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.提出方法

廃業届は、事業の所在地を管轄する税務署に提出しなければなりません。一般的に、開業届を提出した税務署と同じ場所になりますが、事業所の所在地が変わっている場合は、その所在地を管轄する税務署に提出してください。

また、提出方法としては、税務署に持参するか、郵送のどちらかを選択可能です。郵送する場合は、廃業届の控えを受け取るための返信用封筒を同封しておく必要があります。

提出期限は、廃業日から1か月以内であり、期限が土日​​や祝日にあたる場合はその翌日が期限となります。

2.必要書類

廃業届を提出する際に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 個人事業税の事業廃止届出書

都道府県によって異なりますが、個人事業税の納税通知書が届いている場合は提出が必要となる。たとえば、東京都では廃業日から10日以内に「事業開始(廃止)等申告書」を提出しなければならない

  • 所得税の青色申告の取りやめ届出書

青色申告をしている場合、翌年の3月15日までに税務署へ提出する

  • 給与支払事務所等の廃止届出書

従業員や家族に給与を支払っている場合、廃業日から1か月以内に提出する

  • 所得税および復興特別得税の予定納税額の減額申請書

所得税の予定納税額が過大になる場合、7月15日または11月15日までに税務署へ提出する

  • 消費税の事業廃止届出書

消費税の認知事業者は、管轄税務署へ提出する

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廃業届の書き方

廃業届の書き方

廃業届を提出する際には、以下の項目を記入する必要があります。

  • 職業:個人事業を営んでいた職業を記入
  • 屋号: 屋号がある場合はその名称を記入
  • 廃業(事由):「廃業」にチェックを入れ、その理由(例: 法人成り、業績不振)を記入
  • 所得の種類:関連するすべての所得の種類をチェックする
  • 法人設立による廃業の場合:設立法人名、代表者名、法人納税地、設立登記日を記入
  • 開業・廃業等日:廃業日を記入
  • 届出書提出の有無:青色申告の取りやめ届出書や消費税の事業廃止届出書提出がある場合は「有」にチェック
  • 給与支払いの状況:従業員や事業専従者に給与を支払っている場合は記入

なお、廃業届の書き方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:廃業届の書き方とは?廃業する際に必要な手続きや廃業届の提出方法を詳しく解説します! – 金山株式会社

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廃業届のデメリットでよくある3つの質問

廃業届のデメリットでよくある3つの質問

最後に、廃業届のデメリットでよくある質問について解説します。

  • 質問1.飲食店の廃業に必要な手続きは?
  • 質問2.廃業した際に借入金が残っている場合はどうなる?
  • 質問3.廃業以外の選択肢は?

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

質問1.飲食店の廃業に必要な手続きは?

飲食店の廃業には税務署へ提出する書類のほかに、以下の手続きが必要です。

  • 保健所

「廃業届」と「飲食店営業許可書」を返納する。提出期限は廃業日から10日以内の場合が多く、書類形式や手続きは保健所によって異なる

  • 消防署

「防火管理者選択任(解任)届出書」を提出する。提出期限は定められていない

  • 警察署

「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出している場合、「廃止届出書」を廃業日から10日以内に提出する。また、「風俗営業許可証」を保持している場合は、返納理由書とともに「営業許可書」を返納する

  • 公共職業安定所

雇用保険に加入していた場合、「雇用保険適用事業所廃止届」と「雇用保険被保険者資格喪失届」、「雇用保険被保険者離職証明書」を廃業翌日から10日以内に提出する

  • 日本年金機構(年金事務所)

雇用保険や健康保険に加入していた場合、「雇用保険適用事業所廃止届の事業主控」および「健康保険・厚生年金保険適用事業所全弔届」を廃業日から5日以内に提出する

  • 労働基準監督署

労働保険に加入している場合、「労働保険確定保険料申告書」を廃止または終了の日から50日以内に提出する

なお、廃業届以外に必要なものについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:廃業届 必要なものに内部リンク

質問2.廃業した際に借入金が残っている場合はどうなる?

廃業後に借入金が残っている場合、すべての借入金は個人の借金として残ります。資産の売却で返済できる場合は問題はありませんが、返済できない場合は注意が必要です。

事業資金の借入時に個人資産を担保した場合、債権者が権利を保有し、強制的に競売される可能性があります。このため、住居や車など生活基盤を失いかねません。

また、返済計画については、金融機関や債権者と事前に相談することが大切です。債権者は多くの債権を回収したいと考えているため、継続的な収入が見込まれる場合は、交渉に応じてくれる可能性があります。

しかし、廃業により収入源が失われ、リスケジュールに応じてもらえない場合もあるため、担保を売却するケースが多いです。

質問3.廃業以外の選択肢は?

事業廃業以外の選択肢としては、以下の方法があります。

  • 休業

事業の再開を考えている場合に、事業活動を一定期間休止する方法。赤字は3年繰り越しが可能なため、損失が発生している場合、確定申告を怠らないようにする必要がある

  • 事業承継

事業主の高齢化やそのほかの理由で事業を続けられない場合、親族や従業員、M&Aによる第三者の承継が考えられる。M&Aにより、経営力のある第三者に事業を譲れば、事業の保留と譲渡益の獲得が可能となる

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まとめ

まとめ

本記事では、廃業届を提出するメリットやデメリット、提出する時期、書き方、必要書類、提出方法についてご紹介しました。

個人事業主が事業を終了させる場合、「廃業届」を税務署に提出する義務があります。提出期限は、廃業日から1か月以内となっているため、忘れずに管轄の税務署に持参か郵送で提出しましょう。

廃業届を提出するメリットには、破産手続きの回避や大きなプレッシャーからの解放などがありますが、資産の売却価値の低下や取引先への影響などのデメリットも存在します。提出時期は、事業を停止した日から適切な期間内に行うようにしてください。

また、提出方法については、必要書類を添えて税務署や市役所に持参するか、郵送のどちらでも構いません。必要書類には廃業届本体のほかに、最終的な税務申告書類が含まれるのが一般的です。

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