
飲食店を廃業する場合、行政機関に提出しなければならない書類や対応が数多く存在します。提出や対応を忘れると、後々のトラブルの原因になる可能性があるため注意してください。
本記事では、飲食店を廃業する際に、廃業届以外に必要なものの一覧や廃業する際に注意が必要な連絡先についてご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

廃業届とは?

個人事業主が事業を廃止する場合には、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出しなければなりません。廃業届は、所得税や消費税などの税務処理を円滑に進めるために欠かせない手続きです。
この廃業届は、国税庁のウェブサイトや税務署で入手できるため、廃業届の記載方法についての疑問点があれば、所轄の税務署で相談するようにしてください。
廃業届の提出方法
廃業届は、事業を停止した日から1か月以内に所轄の税務署に提出する必要があります。期日が土日祝日と重なる場合は、翌営業日が提出期限となるため、カレンダーで確認し、期日を守るようにしてください。
また、提出方法は書面で郵送する方法や税務署に持参する方法、国税庁のe-Taxシステムを利用する方法があります。なお、廃業届の提出には料金はかかりません。

【行政機関別】廃業届以外に必要なもの一覧

次は、廃業届以外に必要なものを行政機関別に解説します。
- 保健所
- 警察署
- 消防署
- 公共職業安定所
- 労働基準監督署
- 日本年金機構
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.保健所
廃業する際には、所轄の保健所へ廃業日から10日以内に「廃業届」を提出する必要があります。必要な書類は保健所や自治体のウェブサイトからダウンロード可能です。
また、書類を記入する際、営業許可番号がわからない場合は、食品営業許可証を確認しましょう。さらに、廃業に伴い「飲食店営業許可書」の返納も必要です。
紛失した場合は、地域によっては紛失届の提出が必要ですが、廃業届を提出すると対処できる場合もあります。地域によっては、電子申請による手続きが可能なため、確認してみてください。
2.警察署
「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出している店舗が廃業する際は、所轄の警察署に「廃止届出書」を廃業日から10日以内に提出する必要があります。さらに、「風俗営業許可証」を保持している場合は、「返納理由書」とともに営業許可書を警察署に返納しなければなりません。
この手続きも同じく廃業日から10日以内に行う必要があります。また、これらの手続きを怠ると、30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意が必要です。
3.消防署
防火管理者の解任手続きについて、廃業日に「防火管理者選任(解任)届出書」を消防署に提出する必要があります。用紙は所轄の消防署から入手でき、提出期限は設定されていません。
なお、開業時に提出した「防火対象設備使用開始届」に関連する手続きは、廃業の場合は不要です。閉店する際にも同様の手続きが求められますが、解任日は閉店日と一致するため、早めに提出するようにしましょう。
4.公共職業安定所
雇用保険に加入している事業所が廃業する場合、まず廃業日から5日以内に「雇用保険適用事業所廃止届」を提出する必要があります。また、雇用保険の加入者がいる場合、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出する必要があります。
「雇用保険被保険者離職証明書」は公共職業安定所の窓口で入手するか、ウェブサイトからダウンロードが可能です。
5.労働基準監督署
事業を廃止または終了した場合、雇用保険や労災保険に加入している企業は、「労働保険確定保険料申告書」を営業終了日から50日以内に提出する義務があります。この申告書は、所轄の労働基準監督署や都道府県労働局、または日本銀行(本店や支店、代理店および歳入代理店)で提出できます。
万が一、申告書が手元にない場合には、所轄の労働基準監督署から郵送での取り寄せが可能です。従業員に関する手続きが遅れると、その家族にも影響が出る可能性があるため、すみやかな対応が求められます。
6.日本年金機構
会社の廃業を予定している場合、雇用保険や健康保険の加入状況を前もって確認しておきましょう。「雇用保険適用事業所廃止届の事業主控」のコピーと「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を準備し、廃業日から5日以内に提出する必要があります。
この手続きは期限が短いため、事前に必要な書類を整理し、スムーズに手続きを完了させましょう。

飲食店を廃業する際に注意すべき連絡先は5つ

次は、飲食店を廃業する際に注意が必要な連絡先について解説します。
- 公共機関(電気・ガス・水道)
- レンタル先
- 仕入れ業者
- 金融機関
- 不動産管理会社
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.公共機関(電気・ガス・水道)
引っ越しや閉店に伴う公共サービスの解約手続きは、それぞれの契約会社への電話連絡で済ませられます。ガスの解約には立ち合いが必要な場合があるため、早めに連絡しておきましょう。
また、水道については、原状回復工事などで使用する場合もあるため、工事業者と相談して解約日を設定しましょう。さらに、インターネットや追加したテレビアンテナの解約も忘れないように注意が必要です。
手続きを怠ると、次の契約者に迷惑をかけるだけでなく、基本料金が請求され続ける可能性があるため、早めの対応を心がけましょう。
2.レンタル先
飲食店を閉店する際には、リース品と同様にレンタル品の返却も必要です。手続きを怠ると、不動産会社によってレンタル品が処分され、高額な賠償金を請求されかねません。
ビールサーバーやおしぼりウォーマーなどの機器だけでなく、有線放送設備や玄関マットも忘れずに返却しましょう。また、返却先は請求書に記載されている連絡先が一般的です。
閉店の間際まで使用するものが多いため、返却日は閉店後に設定するのがおすすめです。
3.仕入業者
仕入れた食材やお酒の支払いのタイミングが、閉店や移転と重ならないよう注意が必要です。現金支払いが必要な場合もあるため、事前に業者と支払い方法や時期について相談しておくことが大切です。
また、移転先での配送についても確認し、支店がある場合は新しい場所へ配送が可能か相談してください。これまでの感謝の気持ちを込めて、メールや手紙などで挨拶するのも忘れないようにしましょう。
4.金融機関
追加融資の可能性がある場合は、閉店を決定する前に金融機関に相談するようにしましょう。また、返済の残額がある場合、閉店後も返済を続ける義務があるため、必ず金融機関に報告しなければなりません。
金融機関は、融資の対象がなくなると、返済計画や追加融資の条件を変更する場合がありますが、一括返済を求められるわけではありません。しかし、何も知らされずに融資対象が消滅してしまうと、返済が滞った場合に信用が損なわれるリスクがあります。
5.不動産管理会社
物件やテナントを借りている場合、解約通知の連絡を管理会社に共有する必要があります。賃貸借契約の内容により、解約予告を送るべき期限が異なるため、契約内容をよく確認しましょう。
また、スケルトン物件か居抜き物件かにより、原状回復工事の有無や、ガス・電気などのインフラ停止手続きが異なるため、管理会社と協力しながら進めることが大切です。

廃業届に必要なものでよくある3つの質問

最後に、廃業届に必要なものでよくある質問について解説します。
- 質問1.廃業届を提出しないとどうなる?
- 質問2.廃業のタイミングはいつにするべき?
- 質問3.廃業届以外に税務署に提出が必要な届出書は?
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.廃業届を提出しないとどうなる?
廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出しない場合の罰則はありませんが、提出しないと税務署から事業が継続していると見なされるため、確定申告が求められます。
トラブルを避けるためにも、事業を閉める場合は必ず廃業届を提出しましょう。事業を再開する可能性があるなら、廃業届を出さずに休業状態にするのがおすすめです。
休業する場合、自治体によっては「事業休止届」が必要となる場合があるため、事前に確認しておくと安心です。また、廃業届を提出した場合、事業を再開するには再度手続きをする必要があります。
質問2.廃業のタイミングはいつにするべき?
個人事業主の場合、事業の廃業日は自由に決められるため、1月1日〜12月31日までのどの日を選んでも問題ありません。ただし、廃業した年の確定申告は、翌年の3月15日までに実施しなければなりません。
なお、事業を廃止した後に発生した廃業に関連する経費も、特例により必要経費として認められます。この特例を利用すると、廃業後の経費負担が軽減され、事業の終了手続きが円滑に進められます。
質問3.廃業届以外に税務署に提出が必要な届出書は?
廃業届以外に税務署に提出が必要な届出書としては、以下が挙げられます。
- 青色申告の取りやめ届出書
- 消費税の事業廃止届出書
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書
- 税結果および復興特別成果税の予定納税額の減額申請書
- 個人事業主の死亡届出書(個人事業主の死亡が廃業の理由である場合)
事業の経営状況によって提出すべき書類は異なるため、事前に確認しておきましょう。適切な書類を提出しないと、税金を徴収されて不利益を被る可能性があります。
なお、廃業届の書き方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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まとめ

本記事では、飲食店を廃業する際に、廃業届以外に必要なものの一覧や廃業する際に注意が必要な連絡先についてご紹介しました。
廃業届は、事業を終了する際に税務署へ提出する書類です。廃業の場合は、廃業届以外にも保健所や警察署、消防署、公共職業安定所、労働基準監督署、日本年金機構にそれぞれ書類の提出が必要です。
それぞれの書類には提出期限があるため、計画的に進めるようにしましょう。また、飲食店を廃業する際には、公共機関(電気・ガス・水道)やレンタル先、仕入業者、金融機関、不動産管理会社への連絡も忘れないでください。

