飲食店のアイドルタイムとは、お店が比較的閑散とする時間帯を指します。この時間帯は、売上が落ち込みがちですが、実は工夫次第でビジネスチャンスに変えることが可能です。
本記事では、飲食店のアイドルタイムの概要やメリット、デメリットをご紹介します。また、活用するためのアイデアも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
飲食店のアイドルタイムとは？
飲食業界における「アイドルタイム」とは、ピークタイム以外の来店客が少ない時間帯を指します。アイドルタイムの語源は、英語の「idle」に由来し、「何もしない時間」や「待機時間」という意味です。
一般的にはランチタイムとディナータイムの間や深夜から早朝の時間帯が該当します。多くの店舗では、この時間を利用して休憩を取ったり、次のピークタイムに向けた準備をするのが一般的です。
【ジャンル別】主なアイドルタイムの時間帯
次は、主なアイドルタイムの時間帯について解説します。
- レストラン
- カフェ
- 居酒屋
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.レストラン
レストランのアイドルタイムは、一般的に15時～17時までの間で、ランチタイムとディナータイムの間に位置し、客足が途切れやすくなります。オフィス街に立地するレストランでは、ピークタイムを過ぎた13時から〜14時頃には客数が大幅に減少します。
しかし、アイドルタイムを「手があく時間」ではなく、ディナーの仕込み時間として活用しているレストランが多い傾向です。
2.カフェ
カフェにおけるアイドルタイムは、一般的に14時〜17時の間です。この時間帯は、カフェにとって収益を上げるチャンスとなり得るため、さまざまな戦略が考えられます。
たとえば、限定メニューや割引を提供し、客を引きつける試みやカフェだけでなくレストランとしての機能も併せ持ち、1日の売上を安定させる工夫をしています。立地や季節によってアイドルタイムは変動するため、それぞれの店舗が地域や顧客のニーズに合わせて対策することが大切です。
3.居酒屋
居酒屋では、仕事帰りの会社員をターゲットにしているため、開店から19時頃までがアイドルタイムです。この時間帯の集客を図るために、ハッピーアワーとしてアルコールメニューの割引や飲み放題プランを提供する店舗が増えています。
また、昼の時間帯に営業していない居酒屋がカフェや和食店として「間借り営業」で、業時間外の売上を目指すのも一般的です。
飲食店におけるアイドルタイムのメリットは3つ
次は、飲食店におけるアイドルタイムのメリットについて解説します。
- 調理の仕込みができる
- 清掃作業ができる
- 従業員の休憩や教育ができる
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.調理の仕込みができる
アイドルタイムを使って料理の仕込みをして、店の効率を大幅に向上させます。さらには、調理に必要な前処理や調味料の補充、在庫の確認と発注も可能になり、営業後の作業時間の短縮が可能です。
このように、アイドルタイムを有効活用し、営業時間中はスムーズなサービス提供に集中できるため、顧客満足度も向上します。
2.清掃作業ができる
営業のピーク時には接客と調理に専念するため、アイドルタイムを利用して店内の清掃ができます。顧客が少ない時間帯には、厨房の設備や冷蔵庫、フライヤーなどの清掃ができるため、衛生面での問題を未然に防げます。
さらに、客席やカウンターの整理整頓もでき、次のピークタイムへの準備が可能です。ただし、顧客が店内にいる場合には、目につきにくい場所の清掃に限定し、よい印象を保てるように注意しましょう。
3.従業員の休憩や教育ができる
アイドルタイムをスタッフの休憩時間にあてると、体力や精神力の回復を図れるため、ピーク時間帯において万全の状態で接客ができます。さらに、接客マナーや衛生管理の研修、新メニューの開発や試食会などを通じて、スタッフのスキルやモチベーションの向上も可能です。
これにより、サービスの質や効率が向上し、結果的には売上や競争力の強化につながります。
飲食店におけるアイドルタイムのデメリットは3つ
次は、飲食店におけるアイドルタイムのデメリットについて解説します。
- 無駄なコストが発生する
- 店舗のイメージダウンにつながる
- サービスの質が落ちる可能性がある
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.無駄なコストが発生する
特別なプロモーションやサービスの提供には追加の人員が必要となり、人件費の増加が避けられません。また、店舗を運営するための光熱費も増加する可能性があります。
このため、アイドルタイム中の売上がコストを上回らない場合は、人員のシフト調整を行い、コスト削減を図ったり、アイドルタイムの売上を向上させたりする施策を検討する必要があります。
また、無駄なコストが売上を上回ると、経営状態に悪影響をおよぼしかねません。このような状況が続くと、経営そのものが危うくなってしまうため、注意してください。
なお、飲食店が潰れる前兆については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事：飲食店が潰れる前兆として考えられる10の共通点｜廃業率や潰れないためのポイントも解説！
2.店舗のイメージダウンにつながる
客数が減少すると店内の活気が失われ、来店した際に寂しい雰囲気を感じるため、店の評判や再訪の意欲にも影響を与えます。さらに、外から店内が空いている状態が見えると、人気がないお店のような印象を与えかねません。
これが新規顧客の獲得や店のブランドイメージに悪影響をおよぼすため、アイドルタイムには店内が活気づくような工夫が求められます。
3.サービスの質が落ちる可能性がある
ピークタイム後にリラックスし過ぎていると、突然の団体客の来店に迅速に対応する準備が整っていないため、十分なサービスが提供できません。このように準備不足は、注文の確認や調理、配膳に必要な時間を増やし、結果的に顧客満足度を下げてしまいます。
スタッフはアイドルタイムにも緊張感を持って業務にあたり、常に顧客が満足するレベルのサービスを提供できるように努めましょう。
飲食店でアイドルタイムを活用するための5つのアイデア
次は、飲食店でアイドルタイムを活用するためのアイデアについて解説します。
- 限定メニューやサービスを導入する
- テイクアウトを提供する
- イベントやワークショップを開催する
- レンタルスペースとして提供する
- ゴーストレストランを運営する
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.限定メニューやサービスを導入する
アフタヌーンティーセットや時間限定のハッピーアワー割引などを導入し、通常のピークタイム以外で顧客の関心を引けば、来店を促せます。さらに、新規メニューの試作や試食の実施もアイドルタイムの貴重な利用方法です。
これらの取り組みは、新規顧客の獲得や競合との差別化にもつながり、店舗の魅力を高めるために非常に効果的です。
2.テイクアウトを提供する
アイドルタイムに店の前を通る人の流れを調査し、その時間帯に多い層に特化したテイクアウトメニューを提供すると、通常の食事時間以外にも売上を伸ばせます。これにより、昼食や夕食の準備として便利な選択肢の提供ができ、顧客の利便性を高めます。
また、店前の通行人が少ない場合は、テイクアウト専門サービスやデリバリープラットフォームへの参加を検討するのがおすすめです。
3.イベントやワークショップを開催する
イベントやワークショップにより、顧客との関係を強化し、新たな収益源が期待できます。たとえば、料理教室を開催し、料理への興味を持つ地元の人々を店に引き寄せます。
さらに、ワインテイスティングや地元アーティストによるライブ、展示会なども効果的です。これらの活動は、店の魅力をさらに高め、通常の営業時間にはない特別な体験を提供し、新しい客層を引きつけられるチャンスとなります。
4.レンタルスペースとして提供する
店内の空いている席や空間を会議やセミナー、プライベートパーティーなどの目的で貸し出しする方法もあります。さらに、コワーキングスペースとしての利用や、映画や写真の撮影に使用するロケーションレンタルサービスも有効な方法です。
これにより、通常の営業時間外に追加の収入を生み出すと同時に、店舗の利用可能時間を最大限に活用できます。また、コストを抑えつつ新たな顧客層を引きつける効果があり、店舗の認知度向上や地域コミュニティとの連携強化にも寄与します。
5.ゴーストレストランを運営する
ゴーストレストランは、実店舗の客席を持たず、デリバリーやテイクアウトの受注のみに特化しているレストランです。このビジネスモデルは、店舗の物理的な限界を超えて、広い地域にサービスを提供できます。
アイドルタイムには、キッチン設備とスタッフを活用して、自宅で質の高い食事を楽しみたいと考える顧客層のリーチが可能です。このような営業形態は、固定客だけでなく新しい顧客層の獲得にもつながり、収益の増加を見込めます。
飲食店のアイドルタイムでよくある3つの質問
次は、飲食店のアイドルタイムでよくある質問について紹介します。
- 質問1.アイドルタイムの取り組みを活性化させる方法は？
- 質問2.アイドルタイムの対策が必要な理由は？
- 質問3.飲食店で客席回転率を上げる方法は？
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.アイドルタイムの取り組みを活性化させる方法は？
アイドルタイムの取り組みを活性化させる方法は、以下があげられます。
- SNSを活用する
InstagramやFacebook、X（旧Twitter）、TikTokなどを通じて、アイドルタイムの特別メニューやイベントの情報を発信する。魅力的な写真やキャッチコピーを使って、フォロワーの興味を引き、店舗訪問を促すようにする
- 店内POPを作成する
店内の視覚的なディスプレイを利用して、アイドルタイムのプロモーションや特別イベントに関する情報を目立つ場所に掲示する。目を引くPOPデザインは、顧客の関心を喚起し、情報の伝達に効果がある
質問2.アイドルタイムの対策が必要な理由は？
アイドルタイムの売上が落ちてしまい、経済的なロスを最小限に抑えるために対策が必要です。客足が遠のくアイドルタイムは、売上が減少する一方で、人件費や水道光熱費などの固定費は変わらずに発生します。
そのため、この時間を無活動で過ごしてしまうと、店舗の収益性に大きな影響を与えかねません。さらに、アイドルタイムを有効に活用すれば、通常時間帯の売上だけでなく、追加の収益源を生み出せます。
質問3.飲食店で客席回転率を上げる方法は？
飲食店で客席回転率を高める方法は、以下のとおりです。
- オペレーションの改善
効率的なサービス提供を実現するためには、料理の提供時間の短縮とテーブル管理の効率化が重要となる。たとえば、注文から提供までの流れをスムーズにするために、キッチンとフロアスタッフの協力を強化し、各テーブルの状態をリアルタイムで把握できるシステムの導入が推奨される
- メニューを選びやすくする
提供する料理の数を絞り込み、看板メニューや人気のある料理を強調し、注文までの時間を削減する。また、メニューが一目で理解できるように工夫するのも有効な手段となる
- 空席率を減らす
店内の配置を最適化し、各顧客のグループサイズに合わせた席割りを心がける。小さなグループや単独の顧客は、小さいテーブルやカウンター席へ案内し、大きなテーブルは大人数のグループまたはピークタイムに予約が入っている時に限定して使用する
まとめ
本記事では、飲食店のアイドルタイムの概要やメリット、デメリット、活用するためのアイデアを紹介しました。
飲食店のアイドルタイムとは、比較的来客が少ない時間帯を指します。レストラン、カフェ、居酒屋などのジャンル別に異なるアイドルタイムが存在します。
この時間を有効活用すれば、調理の仕込みや清掃作業、従業員の休憩や教育が可能です。しかし、無駄なコストの増加や店舗のイメージダウン、サービスの質低下といった危険性もあります。
アイドルタイムを有効に活用するためには、限定メニューの提供やテイクアウトの導入、イベントの開催、レンタルスペースの提供、ゴーストレストランの運営などの工夫が求められます。
