賃貸物件の退去時に請求された原状回復費用が高すぎるのではないかと、悩まれている方も多いのではないでしょうか。原状回復をめぐる費用に関するトラブルは少なくありません。
本記事では、原状回復費用の相場、費用が高すぎるときの対処法やケース、費用を安く抑えるコツを解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
賃貸物件における原状回復費用とは?
原状回復費用とは、借主が入居していた部屋を入居前の状態に戻すために必要な修繕や補修費用のことです。具体的には、入居中に発生した破損の修繕費用や過失による汚損の清掃費用などが含まれ、借主の負担となります。
なお、入居時に借主が支払った敷金は、原状回復の費用に充てられるのが一般的ですが、敷金で対応できない傷や汚れがある場合、退去後に追加の費用が請求されるケースがあります。
原状回復費用の相場
賃貸物件の退去費用は、間取りと物件の面積によって変動します。さらに、居住年数や修繕の程度など、状況によっても金額が大きく変わります。
以下の表は、間取り別の退去費用相場に関する目安です。
間取り | 退去費用(相場) |
ワンルーム、1K(20㎡~30㎡) | 15,000~30,000円 |
1DK, 1LDK(30㎡~50㎡) | 20,000~40,000円 |
2DK, 2LDK(50㎡~70㎡) | 30,000~50,000円 |
3DK, 3LDK(70㎡~90㎡) | 50,000~60,000円 |
4DK, 4LDK(90㎡~) | 90,000円~ |
原状回復費用は、部屋の構造やそのほかの条件によっても変わるため、実際に請求される金額が相場に対して高いのかをチェックする目安にしてみてください。
原状回復費用が高すぎるときの対処法は3つ
次は、原状回復費用が高すぎるときの対処法について解説します。
- 貸主に交渉する
- 消費生活センターへ相談する
- 保険が利用できるか確認する
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.貸主に交渉する
賃貸借契約書の内容を確認し、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に則って退去費用が設定されているか確認してください。とくに、契約書に借主がすべてのクリーニングや修繕費用を負担するという記載があるかチェックしましょう。
記載がない場合、退去費用の内訳を確認し、契約内容に反して不当に高い請求がされているケースは、費用の見直しが求められます。また、入居開始前から存在していた傷の修繕費用が請求に含まれている場合、借主が負担する必要はありません。
参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について|国土交通省
2.消費生活センターへ相談する
消費生活センターや国民生活センターでは、電話相談に対応しており、気軽に専門家によるアドバイスやサポートを受けられます。実際に、国民生活センターには、退去時のトラブルに関する相談が多く寄せられています。
もし、納得のいく解決策が得られない場合は、最終手段として訴訟などの法的手続きを通じて問題解決するか検討しなければなりません。
3.保険が利用できるか確認する
多くの賃貸借契約書では、契約締結に伴い火災保険へ加入するのが一般的であり、借家人賠償責任保険が付帯されています。この保険が付帯していれば、原状回復費用や退去時の費用に対応できる可能性があります。
火災保険の補償内容はさまざまであり、偶然の事故による建物の破損や汚れの修復費用が対象となるケースも多いですが、必ずしもすべての退去費用が補償されるわけではありません。したがって、具体的な補償範囲や金額を把握するためには、保険会社に相談しましょう。
原状回復費用が高くなりやすい5つのケース
次は、原状回復費用が高くなりやすいケースについて解説します。
- ペットのにおいや傷
- たばこのにおいや黄ばみ
- 物をぶつけた跡
- DIYによる傷
- カビ汚れ
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.ペットのにおいや傷
ペットを飼っている場合、室内の消臭が必要になるため、クリーニング費用が上乗せされる可能性があります。また、犬や猫を飼っている場合、壁紙に爪痕がつくため、脱臭や全面張替えの必要性が高まります。
また、ペットのにおいが残っていると、広範囲にわたる傷や室内の消臭、除菌に対する修繕費用も高額になりがちです。そのため、ペット可の物件では敷金が高めに設定されているケースが多いのが特徴です。
2.たばこのにおいや黄ばみ
たばこのヤニ汚れや臭いにより、部屋の壁や天井が黄ばむ場合があります。たとえば、6畳の部屋で壁と天井全体(約40平米)の壁紙を交換する場合、1平米当たり約1,000円の修繕費がかかり、全体で約4万円の追加費用が発生します。
さらに、たばこのにおいが残るため、クリーニング代も負担しなければならず、退去時の費用は高額になりがちです。一般的な使用の範囲を超えた汚れと判断されると、基本的には借主の負担となるため、賃貸物件では喫煙の場所や方法に工夫が必要です。
3.物をぶつけた跡
タンスやソファなどの重い家具を移動した際にフローリングに傷がついた場合、退去時の費用が必要になるケースがあります。フローリングの張替えが必要な場合は、高額になる可能性があるため注意してください。
とくに、引っ越し費用を節約するために業者を使わずに家具を移動させる際は、細心の注意を払いましょう。ただし、家具の重みでフローリングがへこんだ場合は、必ずしも入居者の負担になるとは限りません。
4.DIYによる傷
壁に釘やネジなどによる大きな穴があると、退去後に高額な修繕費用を請求される可能性があります。また、DIYの材料を置いた床に跡や塗料が付着している場合、床の張り替え費用が借主の負担となるケースもあります。
賃貸住宅でDIYを楽しむ際は、賃貸向けの部材を使うなど、家に傷を付けないよう配慮しましょう。
5.カビ汚れ
窓周辺の結露から発生するカビや、水漏れの放置によるカビは、壁や床の内部まで腐食している場合があり、修理には高額な費用がかかる傾向にあります。
カビによる損傷は、通常使用の範囲を超えるものと判断されやすく、借主が費用を負担するケースが多いです。カビが発生しやすい場所には事前に対策を施し、日頃からこまめに清掃するようにしましょう。
原状回復費用を安く抑えるコツは3つ
次は、原状回復費用を安く抑えるコツについて解説します。
- 日常的な清掃を怠らない
- 室内で喫煙しない
- 室内設備を大切に扱う
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.日常的な清掃を怠らない
カビやシミなどの汚れは放置すると除去が困難になり、最終的に高額なクリーニング代が請求される可能性があります。また、エアコンや食洗機などの設備の定期的な手入れも怠らないようにしましょう。
日々の清掃を心がけ、設備にも注意を払うことで、退去時に不必要な修理や交換費用、追加のクリーニング費用を抑えられます。
2.室内で喫煙しない
室内での日常的な喫煙により、ヤニ汚れが壁紙を変色させ、退去時の張り替え費用が高額になるケースが多く見られます。退去費用を抑えるためには、室内での喫煙を控えるか、加熱式タバコなどヤニ汚れがつきにくいタイプを常用するなどの対策が効果的です。
また、共用部であるベランダでの喫煙は一般的に禁止されているため、注意してください。
3.室内設備を大切に扱う
室内設備を壊してしまい、退去費用が高額になるケースも少なくありません。たとえば、ドアなどの建具の開け閉めを乱暴にしたり、水回りの設備を雑に扱って壊してしまうケースなどが挙げられます。
賃貸物件は、あくまで貸主から借りているものであるため、丁寧に扱うことを日頃から意識しましょう。
原状回復費用が高すぎるでよくある3つの質問
最後に、原状回復費用が高すぎるでよくある質問について紹介します。
- 質問1.貸主の負担になりやすい原状回復費用は?
- 質問2.原状回復の工事業者は自由に選べる?
- 質問3.退去時に起こりやすいトラブルとは?
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.貸主の負担になりやすい原状回復費用は?
経年劣化による傷や汚れの補修、古くなったデザインや設備のグレードアップなど、物件のメンテナンスに伴う費用は基本的に貸主の負担となります。主な事例としては、以下が挙げられます。
- フローリングや畳、壁紙の日焼けによる色あせや劣化
- 家具の設置跡や通常使用による床の凹みや傷
- 家電製品の背面壁への電気焼け
- エアコンや時計設置に伴う壁のビス穴や軽度の穴
- 破損や紛失を除く鍵の交換
- 設備や機器の寿命に伴う故障
- 自然災害による物件の破損
これらの修理や交換は、物件の通常の使用に伴うものであり、通常は貸主の負担とされる場合が多いです。
質問2.原状回復の工事業者は自由に選べる?
中堅のビルでは、弱電配線やパーティションなどの工事を任意の業者に任せられるケースがありますが、基本的に高グレードのビルでは指定業者以外の工事は認められていません。任意の業者に工事を依頼したい場合は、退去時に貸主に確認しましょう。
貸主が非指定業者に工事の許可を出した場合、業者の確かな実績と必要な許認可を持っているか確認するようにしましょう。
質問3.退去時に起こりやすいトラブルとは?
賃貸物件の退去時には、原状回復をめぐる費用に関するトラブルが起こりやすいです。主な問題点としては、以下が挙げられます。
- 入居前に存在していた傷や汚れに対する修繕費を借主に請求された
- 敷金が正当な理由なく返却されない
- 退去時のハウスクリーニングに対して、通常を超える高額の請求を受けた
これらのトラブルは、原状回復の範囲と費用に関する認識の違いから生じます。借主は契約時に設備の耐久年数や特約の詳細を理解し、不明点は貸主との事前の確認が必要です。また、敷金が返却されない場合には、その使用明細を貸主に求めましょう。
まとめ
本記事では、原状回復費用の相場、費用が高すぎるときの対処法やケース、費用を安く抑えるコツを解説しました。
原状回復費用は、借主が入居していた部屋を入居前の状態に戻すために必要な修繕や補修費用です。入居中に発生した過失による破損や汚損がある場合は、これらの費用を借主が負担しなければなりません。
しかし、不当に高額な原状回復費用が請求されるケースもあります。もし、費用が高額であると感じた場合は、貸主へ交渉するか消費生活センターへ相談してみてください。
賃貸物件でのトラブルを回避するためにも、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について正しい知識を有しておくことをおすすめします。