飲食店を経営している方で、人材不足が原因で厳しい経営状態に直面している方や悩まれている方もおられるのではないでしょうか。日本国内では少子高齢化で働き手が減少しているため、人手不足を解消するためには、労働条件や環境の見直しが欠かせません。
本記事では、飲食店における人手不足倒産の前兆や人手不足に陥る原因、解消する方法をご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
人手不足倒産とは？
人手不足倒産は、企業が必要な労働力を確保できず、事業運営が不可能な状態です。日本国内では、少子高齢化により働き手となる人口が減少し続けており、今後もこの傾向は続くと予測されています。
2022年後半以降、経済の回復に伴い転職活動が活発化して、競争力の低い企業では人材の確保が難しくなっています。これにより、必要な人材が確保できない企業は、商品やサービスを提供できず、結果的に倒産に追い込まれる企業も少なくありません。
飲食店における人手不足倒産の前兆は3つ
次は、飲食店における人手不足倒産の前兆について解説します。
- 商品やサービスの提供に時間がかかる
- SNSやHPを活用できていない
- 清掃が行き届いていない
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.商品やサービスの提供に時間がかかる
日本人は、一般的に長時間待つのに対して比較的寛容だとされています。このため、人気の飲食店では、入り口付近で行列ができる光景も珍しくありません。
しかし、長時間待ってようやく席に着いた際に、料理の提供にまで時間がかかっていると、期待が高まっていた分、失望感も大きくなります。ランチタイムやディナータイムでは、待ち時間が10分〜15分を超えると、キャンセルが増える傾向にあります。
2.SNSやHPを活用できていない
SNSや公式サイトなど、オンラインでの情報発信は現代社会において大切な集客ツールです。たとえば、顧客は飲食店を訪れる前に、営業時間や定休日、メニューを確認するのが一般的です。
これらの情報が定期的に更新されていないと、顧客は訪問をためらい、結果的に来店機会を逃してしまう可能性があります。顧客が「訪れても閉まっているかもしれない」と感じると、ほかのお店を探す確率が高まります。
3.清掃が行き届いていない
店内が清潔でない場合、顧客に不快な印象を与える可能性が高まり、信頼を失いかねません。また、店舗が古い場合でも、丁寧な清掃がされていれば、十分な清潔感を保てます。
しかし、清掃が適切にされていない場合、すぐに顧客に伝わり、リピーターの減少につながります。さらに、最悪の場合、店舗の閉鎖を招きかねません。
なお、飲食店が潰れる前兆として考えられる共通点について、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事：飲食店が潰れる前兆として考えられる10の共通点｜廃業率や潰れないためのポイントも解説！
飲食店が人手不足に陥る原因は5つ
次は、飲食店が人手不足に陥る原因について解説します。
- 賃金が低い
- 研修期間が短い
- 休憩時間が不規則になっている
- 業務量が多い
- スタッフを雇用する余裕がない
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.賃金が低い
アルバイトや社員にかかわらず、低い給与で人材を集めるのは困難です。周辺業界の給与水準を把握して、それに見合った報酬を提供しなければ、人材の確保は難しくなります。
また、低い給与を補うためには、ほかの福利厚生や職場環境を充実させるなど、働きやすさを提供する必要があります。競争力のある待遇を整えるのが、優れた人材を引き寄せるポイントです。
2.研修期間が短い
新人スタッフに対する研修が不十分であると、業務効率の低下やスタッフのモチベーション低下につながりかねません。小規模の店舗では、新人に対する研修期間が短くなりがちで、現場でのサポートが不十分な場合があります。
このような状況では、スタッフが業務に適応できず、最終的には退職や顧客離れといったリスクが高まります。このため、充実した研修プログラムを設け、新人スタッフが必要なスキルをしっかりと身につけることが大切です。
3.休憩時間が不規則になっている
飲食店において、アイドルタイムがない場合、従業員は休憩中でも必要に応じて業務に戻らなければなりません。その結果、賃金が追加されないまま、休憩時間が短縮されたり、完全に取れない可能性もあります。
さらに、クローズ時間中でも電話対応や業者とのやり取りが発生する場合があります。このため、予定されていた休憩が十分に取れないと、従業員の負担が増える可能性が高いです。
なお、飲食店のアイドルタイムについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事：飲食店のアイドルタイムとは？メリット・デメリットや活用するためのアイデアをご紹介！
4.業務量が多い
飲食業界では、過酷な労働環境が原因で働く意欲を失う人が多く見受けられます。多くの飲食店では、スタッフが少人数で多くの業務をこなす必要があり、その結果、飲食店での労働は激務になりがちです。
また、長時間労働が問題視されるケースも少なくありません。こうした環境は、従業員のモチベーション低下を招き、結果的に人手不足が深刻化する悪循環につながる可能性があります。
このため、経営者は現実的な業務量と適切な労働条件の確保を心がける必要があります。
5.スタッフを雇用する余裕がない
小規模な個人店では、利益が少ないため、必要最低限のスタッフでの運営を強いられています。これにより、事業主が自らの労力で人手不足を補い、店を維持するケースがほとんどです。
また、個人事業主は法人とは異なり、利益が直接収入に結びつくため、人件費の増加が収入に直結します。その結果、事業主は生活を維持するためにスタッフの人数を最小限に抑えるしかありません。
飲食店の人手不足を解消する方法は5つ
次は、飲食店の人手不足を解消する方法について解説します。
- 労働条件を見直しする
- 待遇を改善する
- 職場のトラブルを解消する
- IT化やDX化を図る
- 外国人やシニア層を採用する
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.労働条件を見直しする
労働時間や給与などの基本的な条件が、他社と比べて劣っていないか確認する必要があります。たとえば、シフトの柔軟性や週末のみの勤務を可能にするなど、働き方の選択肢を広げましょう。
また、資格取得支援や外国人労働者の採用促進といった特典を導入すれば、より多くの応募者にアピールできます。他社との差別化を図り、優れた人材を確保することが大切です。
2.待遇を改善する
従業員が長く働き続けるためには、適切な給与や待遇を提供しなければなりません。とくに、従業員が自身の努力が公正に評価されると感じられる環境が不可欠です。
また、労働条件が改善できれば、従業員の満足度が向上し、定着率が高まるだけでなく、人材の欠員を防ぐ効果も期待できます。その結果、求人にかかるコスト削減や業務の安定化が実現します。
3.職場のトラブルを解消する
従業員が抱える課題や要望を理解し、適切に対応できれば、職場の雰囲気が向上し、従業員のモチベーションが高まります。また、従業員が自分の意見を自由に発言できる環境を整えれば、店舗運営に対する責任感を持つようになり、結果として従業員の定着率が向上します。
また、面談内容を記録しておけば、過去の対応を振り返りやすくなり、問題解決にも役立つためおすすめです。さらに、人間関係の円滑さを保つには、シフトのバランスや業務分担の適切さも確認しなければなりません。
4.IT化やDX化を図る
飲食業界では、労働力不足が深刻な課題となっており、解決には業務の効率化が欠かせません。人材の確保も大切ですが、店舗運営の効率を上げるために、最新技術の活用が求められています。
たとえば、デジタル技術を駆使したシステムを導入すると、従業員の負担を軽減し、少人数でも円滑な運営が可能です。具体的には、セルフレジやモバイルオーダー、シフト管理アプリなどを導入すれば、業務がスムーズに進行し、労働環境が大幅に改善されます。
5.外国人やシニア層を採用する
多くの在留外国人が日本でのキャリアを築き、成長を望んでいます。これらの人材を積極的に採用すれば、企業の成長に貢献できる可能性があります。
一方、シニア層の採用を検討する際は、特定の業務に制限することが大切です。たとえば、「仕込み業務」や「店内整理・清掃業務」など、特定のタスクに集中してもらうと、企業の人材不足を効果的に補えます。
人手不足倒産の前兆でよくある3つの質問
最後に、人手不足倒産の前兆でよくある質問について解説します。
- 質問1.飲食店における人手不足の現状は？
- 質問2.飲食店で人手不足がもたらす影響は？
- 質問3.飲食店の人手不足解消に役立つITツールは？
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.飲食店における人手不足の現状は？
帝国データバンクが公表している2022年9月の調査によると、企業の約半数が正社員の不足を感じており、その割合は50.1％に達しています。さらに、アルバイトやパートなどの非正社員に関しても、30.4％の企業が人手不足を訴えています。
これらの結果は新型コロナウイルスの影響以降、一番高い水準です。飲食業界では、非正社員の不足が深刻で、77.3％の企業がその問題に直面している状況です。
参考：人手不足に対する企業の動向調査（2022年9月）｜帝国データバンク
質問2.飲食店で人手不足がもたらす影響は？
スタッフの労働負荷が増すため、疲労やストレスが蓄積し、結果としてサービスの質が低下する可能性があります。これにより、顧客の満足度が低下し、リピーターの減少や新規顧客の獲得が難しくなるという悪循環が生まれます。
さらに、十分なスタッフを確保できない場合、営業日数を減らさざるを得なくなり、最終的には売上減少や閉店のリスクに直面しかねません。
質問3.飲食店の人手不足解消に役立つITツールは？
飲食店の人手不足解消に役立つITツールとしては、以下が挙げられます。
- スタッフ管理ツール
出退勤や給与計算を自動化し、作業効率を大幅に向上させる。飲食店向けの専用ツールを選べば、勤怠管理やシフト調整が容易になり、法改正への対応もスムーズになる
- 在庫管理ツール
無駄な食材発注やスタッフの長時間労働を防止できる
- キャッシュレス決済やセルフレジの導入
会計業務が簡素化され、衛生面でのメリットがある。さらに、飲食店にて注文も同じシステムでできるため、効率的に進められる
まとめ
本記事では、飲食店における人手不足倒産の前兆や人手不足に陥る原因、解消する方法をご紹介しました。
人手不足倒産とは、スタッフの不足が原因で経営が困難となり、倒産に至る状況を指します。飲食店では、この危機の前兆として、商品の提供に時間がかかっていたり、SNSやHPなどが活用または更新されていなかったりする場合があります。
さらに、清掃が行き届いていないと、顧客からの信頼を失いかねません。また、人手不足の原因には、賃金の低さや短い研修期間、不規則な休憩時間、業務量の過多、スタッフを雇用する余裕がない状況が影響している可能性が高いです。
この問題を解消するためには、労働条件や待遇の改善や職場のトラブル解決、IT化やDX化、外国人やシニア層の採用が効果的です。自分たちの職場状況にあう対策を講じて、安定した経営を目指しましょう。
