建物やマンションなどを解体する工法のひとつに、スケルトン解体が挙げられます。しかし、聞き慣れない言葉により、実際どんな工事をするのかよく知らない人も多いでしょう。
この記事では、スケルトン解体の概要やメリット、費用相場を詳しく解説します。スケルトン解体の費用を安く抑えるコツも紹介するので、解体工事を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
スケルトン解体とは?
スケルトン解体とは、建物の内装をすべて取り除く工事のことを指します。具体的には、建物の基本構造である柱、梁、壁、床などの躯体だけを残し、天井や床材、壁材、パーティションといった内装材を撤去する作業です。
さらに、エアコン、電気配線、排気設備、配管といった各種設備も取り除かれます。
鉄筋コンクリート造の建物を解体すると、解体後はコンクリートの打ちっ放し状態になることが多いです。そのため、この状態を「スケルトン物件」や「スケルトン仕上げ」と呼びます。
スケルトン解体を選ぶメリットは3つ
スケルトン解体を施すことで、次に建物を利用する際、以下のメリットを受けられます。
- 間取りを変更できる
- 利便性が向上する
- 費用を抑えられる
項目ごとに詳しくみていきましょう。
1.間取りを変更できる
スケルトン解体は、建物の基礎である骨組み以外はすべて解体されるため、新しい内装は間取りを自由に設計変更が可能です。複数のテナントが入っている商業施設などの場合、業種や客層にあわせて最適な間取りに変更することで、売上増加も期待できるでしょう。
また、骨組みが露出することで建物全体の状態を確認でき、必要な補修をしやすくなる利点もあります。
2.利便性が向上する
スケルトン解体は、内装を一度完全に撤去し、用途に応じて最適な設計を施すことが可能です。
たとえば飲食店の場合、厨房の位置や客席スペースの広さによって、業務効率や顧客満足度が大きく左右されます。目的にあわせて配線や設備をカスタマイズすれば、快適な空間を実現できるでしょう。
また、スケルトンの物件は、断熱や遮音などの追加工事も幅広く対応できるため、利便性の向上を図るにはスケルトン解体工事が適しています。
3.費用を抑えられる
スケルトン解体は、骨組みを残して解体するため、建物全体を解体するよりも費用を抑えられます。
また、全解体してから新築すると、時間と労力だけでなく、資材費においても高額になりがちです。スケルトン解体をすることで、既存の構造体を最大限に活用し、新たな建築材料の必要性を低減することが可能となります。
その結果、全体的な工事コストを節約し、経済的なリノベーションが実現可能になるのです。
スケルトン解体を選ぶデメリットは2つ
スケルトン解体のメリットを挙げましたが、一方でデメリットもあります。主に、以下の2つです。
- 補修や初期費用がかかる
- 工期がかかる
項目ごとに詳しくみていきましょう。
1.補修や初期費用がかかる
スケルトン解体は、補修や初期費用が高くなりやすいデメリットがあります。
内装や設備を一度完全に取り除くため、その後新しく取り揃えるには相応の投資が必要です。解体やそれに伴う補修、初期設備の費用は、事前にしっかりと計画し予算に余裕をもっておきましょう。
特に資金が限られている状況では、スケルトン解体は経済的な負担が大きくなりがちです。資金の少ない開業時は、一部の内装解体によるリフォームや、前のテナント設備が残る居抜き物件も検討すると、費用負担を抑えられる場合があります。
2.工期がかかる
居抜き退去と比べて、スケルトン解体は最低1週間から3週間程度は工期がかかります。また、建物の規模や状態によっても工期は変動します。
さらに、新たなテナントが入居する際は内装を一から設計し、施工する工事も必要です。そのため、スケジュールの日数が限られている場合は、「厨房は残したまま、その他をスケルトンにする」など、部分的にスケルトン解体をする方法もよく用いられます。
【建物別】スケルトン解体の費用相場
スケルトン解体にかかる費用は、内装すべてを取り除くため、撤去費用や廃材処分費用なども発生します。また、建物の種類や構造によっても作業工程が異なるため、同じ坪単価でも費用が変わってきます。
一般住宅 | 15,000~45,000円/坪 |
アパート | 13,000~40,000円/坪 |
マンション | 14,000~40,000円/坪 |
オフィス | 12,000~36,000円/坪 |
店舗 | 11,000~42,000円/坪 |
さまざまな要素で費用は変動するため、具体的な費用は解体業者に見積依頼しましょう。
スケルトン解体の費用を安く抑えるコツは2つ
スケルトン解体の費用を少しでも安く抑えたい場合、次の2つを考慮しましょう。
- 廃棄処分は自分で行う
- 複数の解体業者に見積依頼する
それぞれ項目ごとに解説します。
1.廃棄処分は自分で行う
スケルトン解体の費用を抑える方法のひとつに、廃棄予定の家具や什器はできるだけ自分たちで処分することが挙げられます。
解体業者に廃棄処理を依頼した場合、基礎工事費用と同じくらい費用がかかる可能性が高いです。すべてを自分たちで処理するのが難しいとしても、最低限可能な範囲で廃棄しておくことで、解体費用を削減できます。
また、まだ使用できるアイテムは、リサイクルショップや中古品買取業者に買い取ってもらうのもおすすめです。自分で廃棄処理をする努力は、経済的なメリットだけでなく、資源を無駄にしないという意味でも価値があります。
2.複数の解体業者に見積依頼する
スケルトン解体の費用を抑えるには、複数の解体業者に見積依頼をすることが重要です。1社だけでは、その見積もりが適正価格かどうか判断が難しいためです。
なお、インターネットの情報はあくまで一般的な相場であり、地域によって価格が異なるケースもあります。条件のよい信頼できる業者を見つけるためにも、複数の業者に相談しましょう。
スケルトン解体とはでよくある3つの質問
最後に、スケルトン解体に関するよくある質問にお答えします。
- 質問1.内装解体工事との違いは?
- 質問2.スケルトン解体の注意点は?
- 質問3.スケルトン解体の流れは?
それぞれ詳しくみていきましょう。
質問1.内装解体工事との違いは?
内装解体工事とスケルトン解体工事の主な違いは、解体の範囲にあります。
内装解体は主に内部の造作、つまり設置された設備や什器の撤去に焦点を当てた工事であり、壁や天井の基本構造は残されます。これに対して、スケルトン解体は建物の基本骨組み以外のすべてを撤去するため、より広範囲な解体作業が行われます。
質問2.スケルトン解体の注意点は?
スケルトン解体をする際は、事前に必ず貸主に確認しましょう。基本的には、貸主の許可がなければ工事を進めることができません。
また、契約内容によっては、原状回復でどこまで解体するのか定められているケースがあります。勝手にスケルトン解体を進めてしまうと、解体してはいけない箇所まで撤去してしまいトラブルの原因になるため注意が必要です。
質問3.スケルトン解体の流れは?
工事をスムーズに進めるためにも、スケルトン解体の流れを事前に理解しておきましょう。一般的なスケルトン解体工事の手順は、次のとおりです。
①養生シートと足場の設置
最初に、粉塵の飛散防止と騒音軽減のため、養生シートを設置します。高い位置での作業が必要な場合は、足場も組む必要があります。
②内装材の撤去
壁紙、電気設備、ガラス、ドアなどの内装材を撤去します。法律に従って適切に分別し、処分します。
③床材の撤去
材質にあわせて床材を撤去します。すべて剥がし終えたら、表面を平滑に整えます。
④内装解体後の処理
工事完了後、産業廃棄物の処理と清掃作業が行われます。違法行為をしていない証明として「産業廃棄物管理票」を作成します。
まとめ
スケルトン解体は、基礎である骨組みを残し、その他の部分を解体します。全解体と比較してコストは抑えられるものの、単純な内装解体に比べると費用は高めになる傾向があります。
また、賃貸契約における「原状回復」の定義は、契約内容によって異なるため、貸主への事前確認が重要です。スケルトン状態まで戻すことを指すこともありますし、内装を残した状態での解体が求められることもあります。