
テナントの解約を検討されている方で、解約の流れや費用について知りたい方もおられるのではないでしょうか。トラブルや予定外の費用がかかるなどのリスクを回避するためにも、事前に手続きの流れを把握しておく必要があります。
本記事では、テナント解約の流れや解約にかかる費用をご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

テナント解約の流れは5つのステップ

まず、テナント解約の流れについて解説します。
- ステップ1.解約予定日を確認する
- ステップ2.解約の予告をする
- ステップ3.退去日・立ち会い日を確定する
- ステップ4.テナントの明け渡しをする
- ステップ5.原状回復工事を実施する
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
ステップ1.解約予定日を確認する
店舗を解約する際には、賃貸借契約書の解約予告期間について確認しましょう。店舗の場合、一般的に住宅よりも長い解約予告期間が設定されており、解約予告期間が3か月〜6か月程度となっている場合が多いです。
また、急に店舗を閉店する場合でも、予告期間に代わる救済措置として、3か月〜6か月分の家賃を支払えば、解約が可能な場合もあります。
ステップ2.解約の予告をする
解約申請書に必要な情報を確認し、書面を作成しましょう。インターネット上には多くのテンプレートがあり、それを利用すると効率的です。
また、書面作成前に不動産業者や貸主、管理会社に電話で事前連絡しておけば、手続きが円滑に進みます。作成した解約申請書をオーナーや管理会社に提出し、受理された後は、管理会社の指示に従い、自治体への必要な手続きを続けてください。
ステップ3.退去日・立ち会い日を確定する
解約手続きが完了したら、退去する店舗の状態を確認してもらうための内見の日程を不動産業者やオーナーと調整しましょう。事前に必要な原状回復の範囲を確認し、概算の日程を出しておくと、スムーズにスケジュール調整ができます。
また、立ち会いの前に店舗をできるだけ清掃して、不用品を処分しておけば、余計なクリーニング代や撤去費用を避けられます。
ステップ4.テナントの明け渡しをする
物件の明け渡しでは、借主と不動産業者、管理会社が室内の状態を確認します。この確認作業では、原状回復工事の範囲が決定されます。
なお、明け渡しでのトラブルを防止するために、事前に破損箇所や修繕が必要な部分を写真に撮って記録しておきましょう。原状回復工事中に新たな傷や損傷が生じた場合、証拠として役立ちます。
ステップ5.原状回復工事を実施する
賃貸物件を退去する際には、契約にもとづき借主が原状回復工事を実施する責任があります。一般的に、スケルトン状態に戻す必要がありますが、入居前の状態に戻せばよいケースも珍しくありません。
また、工事費用は店舗の立地や条件によって異なり、坪単価で5〜10万円程度が一般的です。さらに、リース品の返却や債務の清算も忘れないようにしましょう。

テナントの解約にかかる5つの費用

次に、テナントの解約にかかる費用について解説します。
- 原状回復工事費用
- 賃料
- 空家賃
- 違約金
- 敷金償却
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.原状回復工事費用
原状回復工事とは、賃貸物件を借りた当初の状態に戻すための工事です。この工事の費用は賃貸契約書に明示されているため、その金額を支払わなければなりません。
しかし、契約書の特約にある「使用限度を超えた過失」がある場合、追加費用が発生する可能性があります。一方で、災害や経年劣化による損傷は、貸主が負担します。
このため、契約時に原状回復工事の具体的な範囲や程度を詳しく確認しておかないと、退去時にトラブルが発生しやすいため注意が必要です。
なお、原状回復費用が高すぎる場合の対処法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:原状回復費用が高すぎるときの対処法は3つ|高くなりやすいケースや安く抑えるコツを解説!
2.賃料
店舗の解約手続き後も、すぐに賃料の支払いが停止されるわけではありません。実際に退去するまでの3~6か月の期間、賃料の支払い義務が継続します。
このため、解約に際しては、申請から退去完了までの賃料を含めた総費用を計算しておきましょう。退去時の費用を正確に見積もるためには、この期間の賃料も忘れずに考慮する必要があります。
3.空家賃
賃貸契約において、契約期間が残っていても店舗を閉鎖せざるを得ない場合、営業を続けるよりも空き店舗の賃料のみを支払う方が損失を抑えられるケースがあります。
このような状況では、空家賃の負担が避けられませんが、専門の不動産会社に依頼し、新たなテナントを探してもらうのも解決策の1つです。このため、次の入居者が早期に見つかれば、契約期間の残りを有利に交渉するための有効な材料になります。
4.違約金
契約期間が終了する前に店舗の退去を希望する場合、違約金の支払いが求められるケースがあります。さらに、契約時に預けた保証金や敷金が返還されない場合もあるため、契約期間を待たずに店舗を退去する際は慎重な判断が必要です。
また、解約手続きに関する詳細や違約金の具体的な金額については、事前に契約書をよく確認し、貸主に相談するのがおすすめです。
5.敷金償却
賃貸契約を結ぶ際、保証金や敷金を預けるのが一般的ですが、契約内容によっては違約金や償却金が発生する場合があります。短期解約に対する違約金や、事前に決められた償却率にもとづく清算が必要となる場合も少なくありません。
このため、契約前には契約書をよく確認し、保証金や敷金の払い戻し額がどの程度になるか把握しておきましょう。契約時に急いで内容を十分に理解せずにサインしてしまうと、後で思わぬ費用がかかる場合があるため注意が必要です。

テナントの解約でよくある3つの質問

次に、テナントの解約でよくある質問について解説します。
- 質問1.解約の通知方法はどうするべき?
- 質問2.敷金の返済額および返済期日は?
- 質問3.解約の費用を抑えるコツは?
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.解約の通知方法はどうするべき?
店舗の解約手続きにおいて、トラブルを未然に防ぐためには、解約通知は必ず書面でする必要があります。これにより、解約の意思表示が明確になり、後々のトラブルを避けられます。
また、解約通知書を提出する際は、内容をしっかりと確認し、指定された形式で提出しましょう。管理会社や貸主から指定された書式がある場合は、それを使用するようにしてください。
もし、指定がない場合でも、一般的な解約通知書のひな型を使用しておくと、適切な手続きを進められます。
質問2.敷金の返済額および返済期日は?
敷金は、物件の原状回復にかかる費用によって差し引かれる場合があるため、敷金が全額返済されるかは工事の有無によります。また、敷金は契約終了後すぐに返済されない場合もあるため、返済時期についても事前に確認しておきましょう。
賃貸契約書に返済に関する記載がない場合や疑問点がある場合は、トラブルを避けるためにも、早めに不動産業者や貸主に確認するのがおすすめです。
質問3.解約の費用を抑えるコツは?
物件の解約においては、原状回復が求められ、飲食店では什器や設備の撤去が必要となるため、費用がかかります。しかし、費用を抑える手段として、什器や設備をそのまま貸主に譲渡や売却し、居抜き物件として次のテナントに引き継いでもらう造作譲渡があります。
この場合、物件オーナーの理解と交渉が必要であるため、専門家に相談するのがおすすめです。また、次の入居者を早期に見つけておくと、内装や設備をそのまま引き渡せるため、解約費用を抑えられます。
なお、造作譲渡については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:造作譲渡とは?メリット・デメリットや円滑に進める方法を詳しく解説します!

まとめ

本記事では、テナント解約の流れや解約にかかる費用をご紹介しました。
テナント契約では、解約予告期間が3か月〜6か月程度となっている場合が多いです。このため、解約申請書の作成前に、不動産業者や貸主、管理会社に電話で解約予告をしておきましょう。
また、退去する店舗の状態を確認してもらう前に、できるだけ清掃して、不用品を処分しておけば、余計なクリーニング代や撤去費用を避けられます。さらに、トラブル防止のため、事前に破損箇所や修繕が必要な部分を写真に撮って記録しておきましょう。
原状回復工事費用は店舗の立地や条件によって異なり、坪単価で5〜10万円程度が一般的です。なお、退去するまでの3~6か月の期間は、賃料の支払い義務が継続するため、この点を考慮しておく必要があります。
ほかにも、違約金や敷金売却などの費用が発生するため、事前に契約書をよく確認しておきましょう。

